2019年8月、AIG全英女子オープンで日本人としては樋口久子以来42年ぶりとなる優勝という快挙を成し遂げ、一躍時の人となった渋野日向子選手(21)
岡山県岡山市出身で高校卒業1年後の2018年にプロテストに合格してからわずか1年足らずの出来事はまさにシンデレラストーリーでありそのキャリアとトレードマークの笑顔から「スマイルシンデレラ」とメディアでもてはやされた。天真爛漫な性格からクラブセッティングやプレーも「大雑把」なのかと思いきや、彼女の使うクラブセッティングから、緻密なこだわりが随所に見られた。
今回はそのエースクラブを紹介していきたい。
渋野日向子の最大の武器は「パター」
彼女の特徴といえば一つはソフトボールで鍛えられたパワフルなスイングが魅力の「ドライバー」
そしてもう一つは超強気とも言える「パッティング」だ。
使用しているのは「PING シグマ2アンサー」
このパターの特徴はパターの表面に細い溝が掘られていて、真ん中の部分は深く、離れるに従って浅く溝が掘られているのだ。これによって多少のミスヒットをしたとしても溝の深さが弾きを調節し距離が合うことがメリットとされている。
渋野は高校卒業までマレット型のパターを愛用していたが、1回目のプロテスト落選後に師事し、現コーチの青木翔氏から「ピン型」を勧められて以来変更したという。
彼女曰く、このパターは「ストロークと出玉のスピードが合うので距離が合わせやすい。さらに打感、打音ともにフィーリングと合うため自信を持って打てることが選んだ理由です」と答えている。確かにパターは自分が打った時の「打感、打音、距離」が合わないと何かスタンスに入った時に不安がよぎったりして自信がもてずにショートしたり打ちすぎたりしてしまうことがある。彼女にとってこのパターがベストなのはあの強気なパットからもよくわかる。
全英優勝の鬼の強気パットは自信の現れだったんだね
このクラブは難しいクラブではなくむしろ優しいクラブなので是非一般人の方も使える代物だ。パターを買い換えたい人は購入をオススメしたい!
曲がらない、そして左に行かないドライバー
彼女がパターの次にこだわりを持つドライバーはPING社製品を高校時代から使ってきている。
G30 → G → G400 という遍歴を経て
現在の「PING G410プラス 10.5° スピーダーエボリューションVI 569 SR(設定 ロフト角-1°)」
というモデルに行き着いた。その魅力はなんといっても「大きなヘッドと直進性、そして思い切り打っても左に行かないこと」だという。ドローヒッターである彼女は構えた時につかまる(左にいく)イメージを嫌うがこのG410はそれがなく思いっきり振り抜けるという。つかまりたく理由からライ角も3度フラット(状況により変更ある)し、またシャフト尺も打点のブレを少なくするためになんと「半インチ」カットした44.75インチという超精密なコントロールしている。
思いっきり振れて、左に行かないことを優先したセッティングだね
シャフトがSRと「柔らかめ」を選択していて飛距離よりも「正確性」を求めていることがセッティングからわかる。(それでも軽く260Yは超えるから技術も半端ない)
一般モデルであるために初心者でも扱えるギアであるが、スピン量やスイング軌道などで自分にあったタイプを選ぶのがいいだろう。
フェアエイウッド、ユーティリティはドライバーのフィーリングを引き継ぐ
プロ選手の多くの選手はドライバーとフェアウェイウッドのメーカーをガラリと変える選手が多くない。例えば松山英樹選手はDWがキャロウェイでFWがテーラーメイドなどコロコロ変えるイメージがある。しかし、渋野選手はPING所属らしく(契約がそうなんだろうな)PING一択だ。
3W G410 フェアウェイウッド LST 14.5° スピーダーエボリューションVI 569 SR(ロフト STD)
5W G410 フェアウェイウッド 17.5° スピーダーエボリューションVI 569 SR(ロフト -1°)
3UT、5UT G410 ハイブリッド 19°、22° ダイヤモンドスピーダーHB-7 S(ロフト -1°)
ここからわかるのがドライバーのG410のフィーリングをなるべくウッド系に繋げるように同じモデルのヘッドとシャフトにしているのがわかる。高弾道で低スピンで飛距離を稼ぐというよりはピンを狙う意図が感じられる。3°ごとのロフト差で残りヤードに応じてこの5本のウッドをチョイスし、同じスイングで距離をあわせる工夫がされている。
再現性を高めるため優しいアイアンとシャフト
渋野日向子選手のアイアンというとイメージがないかもしれないが、私がテレビで見る限り「機械のように正確」。もちろん畑岡奈紗や鈴木愛などに比べると若干劣るかもしれないがそれでもトップにいることは間違いない。
5I PING i210 MCI80 R
AW(アプローチ) PING グライドフォージド 51°、55° KBSツアー90 R
ここまで来るとわかるのは、渋野日向子選手はパワーヒッターではないということだ。体格にも恵まれているため、男子のようなセッティングをするかと思いきや全く違う。言葉は悪いが60歳の元気なおじさんが使うセッティングに近い。おそらく「同じスイングをして同じ飛距離を出して同じ場所に止めるにはどうしたらいいか?」という問いに対して答えがこのセッティングなのだろう。このi210もMCI80というシャフトは「優しく、ミスに強く、安定感がある」のが特徴で派手さはない。むしろ彼女にとって「優しすぎるのでは?」と思うくらいだが、見栄をはらずとにかく最小ストロークで回るということに突き詰めている。
自分の力を過信してシャフトXとか買っちゃう人は彼女の爪の垢を煎じて呑みなさい!(自分)
ウエッジは2本で4°刻み。これは完全に好みだが球が広いやすいフォージドを選択している。技巧派らしく小技でグリーン周りを制する気概が感じられる。(シニアプロに近い)
番外編 ボール タイトリスト プロ V1
彼女曰く、マークをつけやすいという理由でプロV1にしているそうだ。なんとも彼女らしい。
まとめ
PING G410プラス 10.5° スピーダーエボリューションVI 569 SR(設定 ロフト角-1°)
3W G410 フェアウェイウッド LST 14.5° スピーダーエボリューションVI 569 SR(ロフト STD)
5W G410 フェアウェイウッド 17.5° スピーダーエボリューションVI 569 SR(ロフト -1°)
3UT、5UT G410 ハイブリッド 19°、22° ダイヤモンドスピーダーHB-7 S(ロフト -1°)
5I PING i210 MCI80 R
AW(アプローチ) PING グライドフォージド 51°、55° KBSツアー90 R
PING シグマ2アンサー
番外編 ボール タイトリスト プロ V1
いかがだったであろうか。渋野日向子選手のセッティングからわかるのはウッドは「思い切って振れて嫌な左に行かない」、アイアンは「狙った場所に落とす」、パターは「フィーリング」。見た目はパワフルに見える彼女だがシニアが扱うようなギアといえば失礼だがそれが彼女にとって正確性を高める要因となっている。見栄を張るようなゴルファーは一度レベルを下ろしたギア選びをするべきだと彼女から学べると思います。
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