低予算番組として知られるテレビ東京の「勇者ヨシヒコと導かれし7人」の神回として語り継がれる「ダシュウ村」篇。日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビ、TBSさらに自局であるテレビ東京を痛快に批判し、イジり倒す超傑作だ。
公式の「あらすじ」では絶対に書けない超絶なテレビ局批判!?
これはテレビ東京が「ダシュウ村」回で公式ホームページ上に公表しているあらすじだ。
仏(佐藤二朗)の導きで、ヨシヒコ(山田孝之)たちはダシュウ村に辿り着く。全ての家が専業農家のようで、店も宿も見当たらない。若者達と知り合いになった一行は、彼らの秘密の小屋に泊めてもらう。若者によれば、ここの村人は全員、朝目が覚めると身体の自由を奪われ勝手に農作業を始めてしまうという。ヨシヒコたちは村人を操る魔物を退治すべく、助けの神に力を貸してもらうため神々を探すが、そこにいたのは…。
『勇者ヨシヒコと導かれし七人』公式ホームページ(テレビ東京)
当たり障りのない内容で、これのどこがテレビ局の批判をしているのか?という疑問はあると思うが、本編の作りは全く違う壮絶なテレビ局イジりとなっているのだ。
日本テレビに強制的に農業を強いられるTOKIOがヨシヒコに助けを求める物語
物語はヨシヒコ(山田孝之)達が「ダシュウ村」という村に入るところから始まる。
村人たちの様子がどうもおかしい。
ある5人組の若者たちと出会い、この村について聞くと驚きの「事実」があったのだ。
村の守り神である「ニッテレン」が魔物に呪いをかけられ、村人全員に強制的に農作業をさせている。大好きなバンド活動ができなくなった若者たちがヨシヒコ達に魔物の呪いを解くようお願いをするというストーリーだ。このバンド活動ができない若者たちはTOKIOのパロディで、リーダー役には芸人のホリが城島茂のモノマネをしながら出演している※他のメンバーもDASH村の格好を着ている。このニッテレンというのはつまり「日本テレビ」、ダシュウ村は「DASH村」、若者たちは「TOKIO」をパロディしている。
この物語の真のあらすじは日本テレビから強制的にDASH村で農作業をさせられるTOKIOが呪いを解いてほしいと訴えるものだ。
完全に日本テレビを敵に回しそうな内容で、さすがにこれは公式ホームページでは絶対に表現できないのは納得できるが、物語はこれで終わらない。
日本テレビをやつけるためにフジテレビ、テレビ朝日、TBSに助けを求める
ニッテレンの呪いを解くためには神の力が必要というヨシヒコ。その神々の設定が秀逸だ。
まず、ヨシヒコ達が助けを求めた神は「シエックスン」。シエックスンとは「CX」のことでフジテレビの「業界略称」でテレビ局スタッフや芸能人たちがよく使うものだ。※寿司=シースー、ギロッポン=六本木みたいなもの
ヨシヒコ達がシエックスンに助けを求めて「ほこら」に行くが、シエックスンは椅子に座って横たわり「死んでいた」。シエックスンは王冠をかぶって、ピンクのカーディガンをプロデューサー巻をしたおじさんのいでたちだ。そこでダンジョー(宅麻伸)が「シエックスンはかつて王様だったが死んだ」という言葉を残し、メレブ(ムロツヨシ)が全力で否定する。これは、かつて視聴率が高くテレビ局の王様として君臨していたが、今は視聴率が低迷し、凋落し死んでしまったと表現しているだ。
テレビ朝日は「相棒」のパロディ
次に助けを求めた神は「テレアーサ」。これはもちろんテレビ朝日のことだ。ほこらに入ると「ROPPONGI」(テレビ朝日の所在地)と入ったタペストリーと警察署の簡易セット。
相棒の杉下右京(水谷豊)のものまねをする俳優マギーが登場。また亀島君と呼ばれる相棒も出演。テレアーサはヨシヒコ達の助けに乗ろうとするもパトランプが点灯し、別の事件が発生したと、その要請を断る。自主規制の「ピー」音でかき消されたが「視聴率を取らなければならない、相棒このあとすぐ」と推測される発言を残しその場を去っていった。
ダンジョー(宅麻伸)が一言も発さないことをメレブ(ムロツヨシ)に指摘されると「土曜21時のことがあるから」とつぶやく。これはおそらく宅麻伸が「土曜ワイド劇場」(テレビ朝日)で世話になったからだと思われる。
TBSは「日テレに勝てない」から助けを求めに行かない
最後に残ったのは「テベスン」(TBS)であるが、ヨシヒコ達は神を訪ねようとはしなかった。ヨシヒコ達が焚火を前にはっきりと「テベスン(TBS)ではニッテレン(日本テレビ)を倒せないだろう」いってしまう。またテベスンは「まれに日曜の夜にとんでもない力を発揮する」※半沢直樹など日曜9時枠ただ、ムラサキ(木南晴夏)が「ニッテレンも日曜日は強いって書いてあるよ」と身も蓋もないことをいう。※日テレはイッテQや行列など日曜の視聴率が高い。
TBSに至っては助けを求める前に「日テレには絶対勝てない」とあきらめたのであった。
大人の事情で助けを求めたのは「テレビ東京」
仏(佐藤二郎)が登場し、ヨシヒコ達が助けを求めていい神は「テレート」だけだ。と言い残し早々と去っていった。テレートとは自局であり「テレビ東京」のことだ。ほこらに行くと、ナナナ(テレビ東京マスコットキャラクター)のいでたちをしたいかにも弱そうなテレート(柄本時生)が待っていた。ムラサキもダンジョーもテレートを「弱そう」とボロカスにいう。そしてヨシヒコも「いないよりはいいか」という自虐的な発言をしてしまう。テレートは「終電逃したやつと空港についた外国人捕まえて行こうぜ!」と自局の番組をいじった発言をし、ニッテーレのもとに向かうのであった。
戦闘シーンは超短いアニメで表現
ニッテーレを操った魔物は日テレキャラクターの「なんだろう」※緑の豚をパロったもので、小学生が書いたような雑な魔物で描かれていた。テレートは果敢に挑むも一瞬で倒されてしまった。おそらく予算の都合であろうが、神々の力を借りずにメレブの呪文ですぐに魔物は倒された。
呪いが解けたニッテーレは徳光和夫
ニッテーレはジャイアンツ読売巨人軍のユニフォームをまとった徳光和夫であった。ヨシヒコ達に感謝の辞を述べつつもヒルナンデス!やスッキリといった番組名を会話に織り交ぜながら最後に思いっきり「ズームイン!」と発して物語が終わった。
全テレビ局を見事にイジり倒したテレビ東京に絶賛の嵐
「ダシュウ村」の回は民放5局すべてをイジりにイジり倒しているところが秀逸だ。
- 日本テレビ:TOKIOに強制的に農業をさせ、バンド活動を奪っている
- フジテレビ:かつて王者だったが今は死んでしまった
- テレビ朝日:相棒で視聴率を取らなければならない
- TBS:日テレには絶対勝てないが日曜の夜だけは強いときもある
- テレビ東京:いかにも弱そうで実際に弱かった
テレビ局はライバル局をいじることは「タブー」とされているところがあり、番組内で批判をするのは少ない。ただ「ヨシヒコ」はこのタブーをうまく破り、他のテレビ局を批判するわけではなくいい意味でイジリ倒したのであった。勇者ヨシヒコはその独特の面白さにファンが多く、この回はテレビ東京の制作力の真骨頂が味わえる最高の神回であるのは間違いないであろう。
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