2020年10月、25年のマジックザギャザリング(MTG)の歴史の中で史上最速の『17日』で創造の座、オムナスが禁止された。
当初、発売したばかりのセットからの禁止は紙をメインにしている競技者が最も嫌がる行為である為に絶対にやってはいけない不文律として、余程なことがない限りその措置を取ることがなかった。
この禁止にネットでは賛否両論が乱れており、様々な意見が溢れかえった。
使用率8割近かったから英断だよ、運営は偉い
これからセット買おうと思ってたのに買う気なくなったわ
オムナスの価格暴落しててワロタ
最近、禁止多すぎてスタン引退するわ Twitterより
ここで2019年後期以降のスタンダード環境で突如「禁止改定」が頻発していることがわかる。
- 2019年11月 王冠泥棒、オーコ、むかしむかし、夏の帳
- 2020年6月 創案の火、裏切りの工作員
- 2020年8月 荒野の再生、成長のらせん、時を解す者、テフェリー、大釜の使い魔
- 2020年9月 自然の怒りのタイタン、ウーロ
- 2020年10月 創造の座、オムナス、幸運のクローバー、僻境への脱出
この禁止が相次ぐ最も大きな理由は『どのデッキに対しても勝率が高くまた、環境を著しく支配する」ことが挙げられる。昔のマジックであれば、強いデッキに対しては必ずメタデッキが存在しており世界大会などでは多種多様のデッキがありそれぞれにオリジナリティが溢れていた。
しかし、2020年のグランプリファイナルでは32人中23人が「4Cオムナス」を使うことなど近年、環境の多様性が失われつつあるのである。
MTGアリーナ(ネット)が環境の理解度を格段にあげる
昔と今とで明らかに違いがあるとすれば、MTGアリーナの普及が挙げられる。アリーナは世界中の4000万人のマジック愛好家と対戦できるデジタルソフトである。
これまで紙媒体で対戦することが限られていた環境が一気にネット対戦で開封されて対戦数やデッキ構築が柔軟になり勝率の高いメタデッキへの回答が一段と早まった。
ビフォーアリーナの流れとして大会で使用されるであろうトップデッキ、それに対抗するメタデッキ、さらにそのメタデッキと言った流れであったが、アフターアリーナではそれを全ての対戦相手と戦いディープラーニングしてその中で最も勝率が高いデッキを選択できるようになった。つまりすでに「最強」の状態で挑まれるようになったのである。
だから32人中23人も使う状況になったのね笑
運営もそのような状況を把握しており、相次ぐ禁止はすぐさま最適化を出す最強メタを解体し続けなければならないのである。
そう聞くと簡単であるが、紙を媒体にしているプレイヤーにとってはたまったものではない。プレイしている人はガチガチの競技勢だけではなくカジュアルに楽しんでいる人もいる為、ユーザー目線で考えるとその行為が必ずしも正しいとは言えないのでは?という意見もある。
しかし、運営の考えていることはもっと深いところにある。
いずれ紙は完全なるコレクター向け、対戦は全てアリーナへ移行される
禁止が相次いだ2019年10月の「エルドレインの王権」から紙媒体のセットで変化がおきた。これまでボックス一色だったブースターに、「コレクターパック」というなんと1パック2,000円の高級パックが登場したのである。
通常Foilだけでなく、拡張アート、ショーケース枠など通常のBOXとは差別化したコレクター向けのセットがエルドレイン以降、全てのセットで販売されているのである。紙媒体の競技人口の減少を見越して純粋なコレクターに向けに単価の高い商品の販売戦略をとったのだ。
奇しくも、紙媒体での対戦が新型コロナの影響で軒並み中止されたことも拍車を掛けて、通常の競技勢は一気にアリーナへ流れた。これこそ運営の求めていたことであり、紙媒体の対戦はいずれは消える運命にあるだろう。
そのことを明らかに示したのが、「創造の座、オムナス」のゼンディカーの夜明け発売後わずか17日での禁止だ。本来であればセットボックスを販売することが運営の収益につながる為に、そのような措置を取ることはしない。しかし、ウィザーズ社(運営)は紙の収益などたかがしれていると判断し、すぐに禁止に踏み切ったのだ。
紙のカードは印刷を含めた物流、在庫管理、人件費などコストが嵩む。それよりデジタル化してしまえばマスも大きくランニングコストもかからないので利益は間違いなく大きいのだ。
しかしこれまで続けてきた紙をなくすことはできない為に、コレクターブースターなど特別感を持たせブランドを守りつつ持続可能な経営を続けようとしているのだ。
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